賃貸物件のオーナーは、管理会社の“善管注意義務”について把握しておかなければいけません。
管理会社が善管注意義務に違反した場合、オーナーは法律に基づいて損害賠償などを請求できるためです。
今回は管理会社における善管注意義務の概要と、違反した場合の処罰について解説します。
善管注意義務って何?
善管注意義務とは、“通常注意しなければいけないことを注意する義務”のことを言います。
“善管”とは、“善良な管理者”の略であり、すべてを略さずに言うと“善良な管理者の注意義務”という名称になります。
賃貸物件のオーナーと管理会社が締結する管理委託契約は、“委任契約”というものに該当します。
委任契約とは、委任者(オーナー)が受任者(管理会社)に法律行為を行うことを委託する契約のことを指します。
民法では、この委任契約について、“受任者は善良なる管理者としての注意をもって委任事務を処理しなければいけない”という旨を規定しています。
つまり管理会社が善管注意義務を負う理由は、オーナーと交わす管理委託契約(委任契約)によって、善管注意義務を負わなければいけないことが規定されているからだということです。
どんなケースが“善管注意義務違反”に当てはまるのか?
では、管理会社の善管注意義務違反には、どんなケースが当てはまるのかについて見ていきましょう。
賃貸物件の建物、管理設備などにおける損傷や危険性、不具合などに気が付いていなかった、または気付きながらも報告しなかった
管理会社が賃貸物件の建物や管理設備における損傷、危険性、不具合に気付かず、報告しなかった場合、“通常注意しなければいけないことを注意していない”と見なされ、善管注意義務違反となります。
もちろん、気付きながら報告しなかった場合も同様です。
修理や補修の依頼に対応せず、事故が発生した
オーナーまたは賃貸物件の入居者から、建物の修理、補修を依頼されていたにも関わらず、何の理由もなく対応せず、それが理由で事故が発生した場合も、当然“通常注意しなければいけないことを注意していない”と見なされるため、善管注意義務に違反に該当します。
上記のような善管注意義務違反が起こった場合は、賃貸物件のオーナーが管理会社に対して、法的な措置を取ることが多いです。
この他にも、マンション管理組合と管理委託契約を結ぶ管理会社が以下のような行為をすることで、善管注意義務違反と見なされます。
この場合、法的な措置を取るのは賃貸物件のオーナーではなく、マンション管理組合ということになります。
具体的には以下のようなケースです。
総会や理事会が開催されないこと、または管理事務についての報告がないことで、マンション管理が滞った
適切ではない会計処理をした
善管注意義務に違反した管理会社への処罰について
冒頭でも少し触れたように、管理会社が善管注意義務に違反した場合、賃貸物件のオーナーは損害賠償を請求することができます。
またそれ以外にも、履行の請求や契約の解除を求めることも可能となっています。
これは管理会社による善管注意義務違反が、“債務不履行”などの民法上の過失と見なされるためです。
債務不履行とは、法律上の約束を破る行為のことを言い、“履行遅滞”、“履行不能”、“不完全履行”の3種類があります。
履行遅滞は、履行期に遅れることによって認められる過失で、履行不能は、履行することができなくなることによって認められる過失です。
そして不完全履行は、約束通り履行したものの、その内容が十分でなかった場合に認められる過失です。
ちなみに、管理会社における善管注意義務違反では、不完全履行が認められる場合が多くなっています。
管理会社における善管注意義務以外の義務
管理会社には善管注意義務以外にも、契約上負わなければいけない“守秘義務”という義務があります。
これは、管理会社が賃貸物件のオーナーや入居者の情報、秘密を第三者に開示しない義務のことを言い、善管注意義務と同じように、通常は賃貸物件のオーナーと交わす管理委託契約書によって義務を負うことが規定されています。
管理会社はその性質上、賃貸物件のオーナーや入居者が他人に知られたくないような情報を多く入手することになります。
例えば、どの入居者がどれくらい賃料を滞納しているのかなどの情報ですね。
また管理会社は、一般的に賃貸物件のオーナーとの契約を終了した後であっても、守秘義務を負い続けることになります。
もし管理会社が守秘義務に違反した場合、善管注意義務違反と同じように、賃貸物件のオーナーは管理会社に損害賠償請求などを求めることができます。
まとめ
管理会社における善管注意義務について、さまざまな角度から解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
賃貸物件のオーナーは、もし管理会社に善管注意義務違反をされた場合、ただちに法的な措置を取るようにしましょう。
管理会社の不注意によって、賃貸物件の安全性や信頼性に悪影響が出てしまうということは、決して許されることではありません。